18歳の春、
友達が皆人生で
一番楽しい時を
謳歌していた頃、
私は独りで
地獄の劫火に
全身を灼き尽く
されていた。
後で知ったのだが、
私が経験した
様なことは、
極限状況と言うらしい。
精神病になるだけ
でもしんどいが、
私の場合、
身体障がいも
同時に経験せねば
ならなかった。
急性期のため、
両手を拘束されたが、
どうやら無意識に
酷く暴れたらしいのだ。
その結果、
両手の手首から
先がほとんど
麻痺してしまった。
感覚を失ったので、
両手首から先を
切断されたのと
同じだった。
と同時に、
一週間の記憶を
失っていた。
ブラスバンド部に
所属していたので、
後輩の定期演奏会を
楽しみにしていたが、
永遠に、聴くことは
出来ずじまいだった。
私が覚えているのは、
しんどい経験は後で
役に立つ、と言うが、
この経験はしなくても
良いモノだな、
と思ったことだ。
極限の悲しみ、
苦しみ、痛みの
世界だった。
存在そのものが
苦しみ、と言う
存在苦の世界に
転生したのだ。
その世界で、
初めての主治医に
出会った。
彼は、開口一番、
生きてんの
しんどいで、
とのたまった。
何を言ってるんだ、
この人、と私は思った。
今なら解る。
他にどんなコトバも
私には届かなかったの
だ、と。
そうして、私の、
精神障がい者としての
人生が始まったのだ。